働く場

日々奮闘!障がいのある人の働く場づくり応援団員
Food Presentationビフォーアフター

はぁとすまいる 藤井  健太郎さん

お店の情報

ベーカリー経営と福祉支援、両立の難しさ

Food Presentation(フードプレゼンテーション)※1にエントリーするまで、“はぁとすまいる”ではオリジナル商品の開発に取り組んでいませんでした。振り返ると、周囲にベーカリーがない場所に店舗があること、地域のお客様には美味しいと評価していただいていることで、満足してしまっていたところがあったと思います。またパン作りのプロセスにおいて、利用者さんたちにどう携わってもらうか、継続的に意欲を持って取り組んでもらうか、といったことに精いっぱいで、外に目が向かなくなっていたところもあったと思います。

“はぁとすまいる”の開店準備をしていた5年前ぐらいの時期は、店舗の経営についての研修に参加するなど、福祉現場の職員でありながらお店作りのプロになることが必要と意識していました。なぜなら、店舗経営の成功が利用者さんたちの工賃アップにつながるからです。しかし、実際に就労支援事業としてベーカリーを経営する中では、利用者さんたちにとってやりやすい作業、やりたい作業は何か、ということに合わせて、商品と工程を考えることが最優先になっていきました。利用者さんに作業の中で、達成感や手応えなどを感じてもらいながらモチベーションを保ってもらうことも、就労支援事業所としては大切なことなので、「この製造工程は、利用者さんにできるだろうか?」という視点は常に持っておく必要があると考えています。

オリジナル商品開発を通しての気づき

そんな中、Food Presentationへの出演をきっかけに、アイデアを出し、素材を調達し、試作を重ねて開発したのがオリジナルパン「いちごロール」でした。Food Presentationでは“はぁとすまいる”以外にも、オリジナルの食パンやジャムを紹介し試食してもらう事業所が登場する中、「いちごロール」は審査員(一般参加者)の皆さんから高い評価をいただきました。一方で、「いちごの味がしない」「甘すぎる」など、消費者目線での手厳しい意見もいただいたことは、これまで狭い視野で食品づくりをしていた自分たちにとっては、大変ありがたいことでした。その評価を踏まえて、「いちごロ―ル」を改良し生産ベースに乗せようとしましたが、利用者さんに合った製造工程を整えることが難しいとわかり、残念ながら今は作っていません。しかし、あきらめずにオリジナル商品を開発することの価値として、お店の成長と利用者さんたちの成長、また職員の成長につながる手ごたえを感じることができました。

お客様と利用者さんたちの声に誠実に向き合って

“はぁとすまいる”は利用者さんたちの訓練の場であり、職場でもある場所です。まちのベーカリーとしてもレベルアップしていかなければなりません。「支援」と「商売」という一見矛盾する役割を持つ現場の職員として、利用者さんにとって、お客様にとって、また福祉事業所として、何が最適なのかを選ぶことは難しく、試行錯誤の連続です。一方で、お客様に喜んでもらうことが利用者さんたちの喜びでもあり、職員のやりがいにもつながる相乗効果も実感しています。就労支援事業所である“はぁとすまいる”では、利用者さんが主役です。このことと商品製造、ベーカリー経営との両立、バランスは難しいですが、常に意識していきたいと思っています。そのためにも、Food Presentationでの学びを活かし、福祉支援の視点だけでなく広い視野を持つことを意識し、実践していきたいと思います。

売りに来て!のオファー歓迎。外販先を募集しています

オープンから4年目となり、店舗で販売するだけでなく他の事業所や社協とのネットワークの中で、外販先が広がってきました。海老名総合病院内での定期販売のほか、曜日ごとに販売先ができつつあり、たくさんのお客様に喜んでいただいています。もっと外販先を増やし、売り上げを向上させていくことが現在の目標です。体調の変化などで安定した通所ができない方もいる中、量産する事には不安もありましたが、日々の作業の中でパン作りのスキルが身につき、戦力となれる利用者さんも増えてきています。利用者さんの頑張りが工賃アップとともに自信につながり、一般就労への移行を実現するためにも、積極的に販路を開拓していきたいと思っています。

※1 共生社会創造のための商品品評会 審査員になろう!Food Presentation
障がい福祉事業所の手作り品をお客様目線でシビアに評価する、商品品評会。会場に集った人全員が審査員となり、試食のうえ採点し「買うか、買わないか」の判断までしていただくイベントです。NPO法人よこはま地域福祉研究センターのオリジナル企画であり、2017年から横浜市内で複数回開催を経て、海老名市社会福祉協議会からのオファーにより2019年2月22日にららぽーと海老名EBICEN flattoで開催。“はぁとすまいる”は商品プレゼンし審査を受ける事業所としてエントリーしました。